Whenmyclockstops’s blog

どうか知って下さい。この名も無きモンスターの正体を。そして、あなたの愛する‥‥

僕の時計が止まるときへ

 

誰も気づかない氷山の一角

 

18歳の彼女は、僕と出会う‥。

 

 僕は知っている。福岡県福岡市のとある小さなアーケード商店街で起きた車の暴走事故?

その真相を、僕は知っている。

 

 車の大好きな18歳の女の子、長沢かえで。その華奢で大人しそうな風貌からはとても想像できないような活発で男勝りな性格。そんな彼女の前に突然現れる名もなきモンスター。

その正体は、未だ解明出来ないままだ。

 

 彼女が高校一年生の頃からずっと続けているアルバイト、決してこの仕事が好きと言う訳ではなかったが、このアルバイト先までの車通勤の時間が彼女にとっての一番の楽しみとなっていた事には違いない。この日も隙あらばと何かと理由をつけてお母さんから軽自動車を借りる事に成功し、元気良く家を出発するところだった。

大きな声で、

「行って来まーす!」

 いつもと変わらぬ光景。だが、この日彼女が家に帰って来ることはなかったのである。

 

 週末、お昼前の少し賑わいをおびてきた商店街。シャッターがおりている店も多い為、そこまで人が集まることもない商店街ではあるが、学生の通学路にもなっていて、時間帯によっては多くの人が行き交う、そんな場所ではあった。

 そんな中、商店街のほのぼのとした空気を侵食するかのように、クラクションの音が鳴り響き始めた。その音は商店街に向かって徐々に大きくなっていて行き交う人の足を止める。

そう、あの彼女、長沢かえでの運転する軽自動車がクラクションを鳴らしながら商店街の入り口に吸い込まれる様にフラフラと向かって来ているのである。まだ幸いな事に彼女を乗せた軽自動車は人をはねたり、商店街内に入りこみ、お店に突っ込んだりと言う事はないが、アーケード入り口付近に設置された公衆電話ボックスに突っ込み、やがて停止、クラクションも鳴り止んだ。

 しかし、その衝撃は思ったよりも大きく、設置されていた公衆電話ボックスは大破し、軽自動車もギュウーっと圧縮されるかの様に押し潰された。目の前で何が起こったのか解るはずもないが、とにかく近くにいたこの事故に気づいた全ての人が軽自動車の彼女を救いに向かうのである。

 この時彼女はすでに心肺停止の状態、さらに頭部には打ちつけた傷と大量の出血。最悪な状態である事に変わりはないが彼女にとって小さな良き偶然が色々と重なっていたのも事実だった。まず、公衆電話ボックスに突っ込んだ時に軽自動車の前輪が上手いこと少し浮き上がり、駆動が空回りしたことでそれ以上の勢いを生まなかったこと。ぶつかった衝撃が大きい割には運転席側のドアの開け閉めに支障をきたさなかった事。さらには週末と言う事もあり沢山の高校生が自転車で帰宅していた事。その結果、その中の男子高校生がたまたま事故現場付近を通り過ぎようとしていた救急車を発見。一度は気づかれずその場を通り過ぎてしまうも、その男子高校生は自転車で救急車を追いかけて、数百メートル先の信号待ちの救急車を呼び止めに行ってくれたのである。そして何より驚く事にこの救急車、誤報なのかイタズラだったのかは定かではないが重病患者や負傷者を乗せる事なく病院へ戻る途中だった言う。

 全ての小さな奇跡と助け合う心が一つになって、なんとか彼女を助ける事には成功した。しかし最悪の事態はまぬがれたものの意識不明の重体である事に未だ変わりはない。彼女を乗せた救急車は大きなサイレンと共に事故現場である商店街を後にし、市内大学病院へと走り始めた。